専門性
これまでデザイナーでもエンジニアでもなかった人が、いきなりデザインエンジニアになるというのは少し難しい気がしています。
というのも、この職種に関してはプロダクトのUIデザインと実装の両方の知識と技術が必要になるからです。
それらを習得するにあたって、どちらも頑張るというのができれば理想的かもしれませんが、現実ではそう簡単な話ではなく、どちらも中途半端になって実務で活躍するには難しいでしょう。
私の経験としてはフロントエンドエンジニアとしての実務経験を数年間詰んでから、それ以外にバックエンドについても理解して、そこからUIデザインにも手を伸ばしたうえで、自分は画面とユーザーの体験を作ることが向いているんだなと気づき、デザインエンジニアとして働き始めました。
もちろん、ここでやっぱりデザインよりもバックエンドとかインフラが得意だなと気づくことができれば、デザインエンジニアに執着せずに、自分の適性がある方に舵を切ることが重要です。
「どちらもそんなにできないんですけど…」では、ジュニアレベルでの転職活動ならうまくいくかもしれませんが、これからキャリアアップをしてシニアレベルを目指していこうという人には厳しいかもしれません。
なので、これまで経験してきてある程度信頼を得られている分野に軸足を置いて、そこからデザインや実装の簡単なタスクから触れる機会をもらって経験値を積むのがおすすめです。
個人開発
元も子もない話ですが、適性を判断するには実際に行動してみるのが早いでしょう。
今や未経験から就職する難易度が年々増しているエンジニア職ですから、実際に行動してみろと言われても、まず就職するのが難しいというのが現状かと思います。
そんな時におすすめなのは個人開発です。
エンジニアなら多くの人が取り組んだことがあると思いますが、今はノーコードツールもあるし、生成AIも驚異的なスピードで進化しているので、エンジニアに限らず比較的デザイナーも始めやすい状況になっていると思います。
なので、挑戦しやすいこの環境を活かして、自分が欲しいものでも、知り合いが欲しいと言っていたものでも、なんでもいいのでまずは手を動かして作ってみましょう。
正直この個人開発で作るプロダクトがお金になるかとかはどうでもよくて、デザインエンジニアの適性を判断するための有益な材料として活用します。
個人開発で何がわかるかというと、UIデザインやプログラミングはもちろん、プロダクトを開発する上で必要な職種を幅広く経験することができるので、実際に就職してみなくても擬似的に経験することで、向き不向き、得意不得意の判断材料にできます。
実際に手を動かしてプロダクトを作る中で意識してみてほしいこと
- 作業中に集中しすぎて、いつのまにか時間を忘れて没頭してる
- 自分はふつうだと思ってたけど、他人からはよく褒められる
- 他人のアウトプットを見て「この人苦手なんだろうな」とか「自分の方が上手くない?」と感じるようになる
この気づきが得られた分野に関しては適性があると言えます。
「自分には得意なことなんてないよ」という人もよく見かけますが、自分では客観視できずに気が付きにくかったり、実践してみたことがなくて適性の有無の判断にまで至らなかっただけだったりするので、ぜひ個人開発を通した自己分析を試してみてください。
コミュニケーション
もしかしたら、「コミュニケーションなら技術とか経験関係ないし全然できちゃうわ」と思うかもしれませんが、コミュニケーションといっても、誰とでもすぐ仲良くなれるといった類のものとは少し違います。
デザインエンジニアに求められるコミニュケーションというのはエンジニアとデザイナーを結ぶ架け橋としてのコミニュケーションのことです。
UIデザイナーもエンジニアも多数所属している大きな組織では、デザインエンジニアとしてエンジニアにデザインの意図を説明したり、デザイナーに実装コストなどについて説明したりといった両面のコミニュケーションを求める募集要項などをよく見かけます。
働いたこともなければ、そうしたタイプのデザインエンジニアの方とお話ししたこともないので、実体のところはよくわかっていませんが。
ただ、私の所属しているようなリソースの少ないスタートアップでは、自身でUIデザインから実装まで一貫することが多いので、そこまでコミニュケーションは求められてはいませんが、もちろん他のエンジニアに自分の作成したUIデザインを実装してもらうこともあるので、そこでは作成したデザインについて説明したりなどのコミュニケーションをとります。
このことから、デザインエンジニアとしての業務ではUIデザインとプログラミングの両方の知識と経験を持ち合わせた上でのコミュニケーションが求められるということがわかっていただけたかと思います。
その他にも実務を経験している中で必要だなと思うコミュニケーションがひとつ。
これは募集要項などに書いてあるような単純なデザイナーとエンジニアの二者間の話ではなく、非開発メンバーとのコミュニケーションです。
実際に経験した部分で言うと、新規プロダクト開発でプロトタイプを作って、組織全体に周知する機会がありました。
開発メンバーであれば、開発やプロダクトに関する基礎知識を深い解像度で持ち合わせているので、プロトタイプを共有した際には専門的な言葉で説明しても理解してもらいやすいですが、非開発メンバーではそうはいきません。
みんなが使っていてよく知っているようなプロダクトを例に挙げて「〇〇の〜みたいな機能をイメージしてください」といったような想像しやすい説明をするなどコミュニケーションにおける工夫をする必要がありました。
なぜ非開発メンバーにもプロトタイプを共有するかというと、実際にデザインに入る前にそれぞれの職種の目線からフィードバックをもらうことができる(特に顧客の解像度が高いCS)からというのと、ビジネスサイドにはリリース後の販売戦略やマーケティング施策の解像度を高めてもらう必要があるためです。
もちろん、開発内でデザイナーとエンジニアの橋渡しとしてのコミュニケーションに特化するのもいいですが、組織全体のコミュニケーションに携わることができると、もっと広い領域で事業に貢献できるので、事業会社で働く楽しさをより深く味わうことができるかなと思います。
まとめ
今回はデザインエンジニアの適性についてでした。
本文中でも何度か触れてきましたが、自分の現在の専門性に加えてデザインを経験してみた時に、そこに適性があれば、もちろんデザインエンジニアの道に進むのかいいと思いますが、他の分野に適性が見えたのであれば迷わずそちらに飛び込むのがおすすめです。
著作家の山口周さんやマーケターの森岡毅さんらも、「苦手を改善しようとするじゃなくて、得意なところを伸ばしなさい。」とお話しされていますが、私も実体験から全く同じ意見です。
仕事の生産性はもちろん違うし、できることを仕事にするというのは幸福度が高いです。
デザインエンジニアを1年間経験してみて思うのは、ユーザーが利用する画面内の体験全体に携わることができるというのは非常にやりがいのある仕事だということです。
なので、もし今回の話を聞いて「自分にはデザインエンジニアの適性があるんじゃないか?」と思うのであれば、ぜひ挑戦して見てください!